十字(前・後)靭帯損傷
- 頻繁に膝が「ガクッ」と崩れ落ちる
- 歩く、走るなどの動作をすると膝に不安定感がある
- 通常の動きでは問題ないが走る動作時に膝が痛くなる
- 運動時に膝が抜ける感じがする
- 膝周りが硬く、正座などができない
十字靭帯とは?
膝には4つの靭帯があり、その中で前十字靭帯、後十字靭帯の2つは膝の前後方向への動きに連動しています。
前十字靭帯は脛骨(すねの骨)が前方に出ないように防いでくれていたり、膝の捻れを制御したりするなど膝の安定性を保つ上で重要な役割をしてくれています。
後十字靭帯は前十字靭帯の2倍の強度と太さがあり脛骨が後方に出ないように防いでくれていたり、前十字靭帯とともに膝の捻れを制御するなど膝の安定性を保っています。
十字靭帯損傷、断裂
十字靭帯損傷が起きた直後は、痛みで動けなくなりその際「ポキッ」「ブチッ」という鈍い断裂音(ポッピング音)が聞こえることもあります。
ただ十字靭帯は前、後どちらも強度が高いためよほどのことがない限り損傷することはありません。しかし無理な力が繰り返し靭帯に加わることで損傷します。
断裂ともなると交通事故や転倒、激しいコンタクトスポーツ(ラグビーやアメリカンフットボール)など相当な衝撃が膝に加わらない限り断裂にはならず基本的には十字靭帯損傷にとどまります。
十字靭帯を損傷した際の症状
症状
受傷後は腫れ(膝関節内血腫)が70%に生じます。そのため受傷直後に動けていた方でも時間が経つにつれて痛みや腫れがひどくなり歩けなくなってしまいます。
これらの症状は受傷から2〜4週間程度を過ぎると関節内に溜まっていた血液が自然と吸収されていき痛みや腫れが落ち着くが、損傷部位や損傷度合いによっては関節の不安定感や歩行障害が起こりやすくなります。
またしっかりと治療せずに放置してしまうと痛みが慢性化したり膝に水(関節液)がたまる関節水腫が生じたりしやすくなります。
通常の動作では問題がなくても運動を再開した際に膝が痛くなったり、外れたりする場合もありスポーツで本来のパフォーマンスを発揮することができなくなります。
•十字靭帯損傷の検査
靭帯を痛めた状況や膝の状態を確認し各種徒手テスト(膝に特定の動きを与えて反応を見るテスト)を行い損傷の度合いなどを詳しく調べていきます。
十字靭帯損傷が疑われた場合、同時に半月板損傷や内、外側側副靭帯損傷など複数を損傷していないかを調べるのも大切です。
また前十字靭帯損傷の疑いがある場合は骨挫傷の有無を確認するためにMRI検査で調べるのも重要なポイントです。
十字靭帯損傷の治療法
治療
前、後十字靭帯損傷はどちらも基本的には保存療法での自然治癒を行います。受傷直後は包帯での圧迫やサポーター装着にて痛みや腫れを抑えます。早い段階で積極的に膝の曲げ伸ばし訓練や大腿四頭筋の筋トレを行います。このとき大腿四頭筋の筋トレをしっかり継続してできるかどうかでスポーツ復帰への早さが変わってきます。
しかし、保存療法では腱が緩みやすく靭帯自体の機能回復は難しいため靭帯損傷を起こす前のようなパフォーマンスは出来ないかもしれません。
前、後十字靭帯断裂の場合は青年期のアスリートでハイレベルなスポーツ活動を維持する場合には切れた靭帯の再建手術が必要です。
術後は前、後十字靭帯損傷と同じで膝の曲げ伸ばし訓練や大腿四頭筋の筋トレ、最後にバランスボールなどで膝周辺のバランス感覚を再教育します。以上のことが問題なければ、活動性の高いスポーツを少しずつ行ってください。
予後
スポーツ活動復帰には最短6ヶ月〜長くて1年以上を要します。
中途半端な治療やリハビリで、関節の緩みが残る症例が多いのが現象なのであせらず治療していくことも重要です。